10月9日、恵比寿ガーデンプレイスで行われたイベント"PechaKucha"に参加しました。これは、さまざまなアーティストが、あるテーマに沿って、20枚のスライドを20秒ずつ映してプレゼンする、というもの。今回のテーマは"SHARE"でした。以下に発表原稿を掲載します。
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こんばんは。瀬戸と申します。私は昨年の11月から今年の2月までの3ヵ月間、「ゴミタビ」と題して、東南アジアのリサイクルの現場を見てまわりました。また、帰国後、5月からまた3ヵ月間、仙台に滞在して復興支援に携わりました。
それは、価値観を巡る旅でした。だれかが「ゴミ」だと思っている物が、別のだれかが生きるために、あるいはお金持ちになるために活用されています。今夜は、その体験をシェアさせていただきたいと思います。
ここは5月21日に撮影した、宮城県南三陸町のようすです。この地域の避難所のひとつだったホテル観洋のおかみさんから、こんな話を聞きました。「水道がでるまで100日以上かかった。その生活は、まるで東南アジアにいるようだった」と。別の避難所では温かい味噌汁が飲めるまで、一ヵ月以上かかったとも聞きました。
一方、こちらはまさにその東南アジアの貧困地域、東ティモールのオエクシです。しかしこちらでは、ココナッツの殻やトウモロコシの芯を燃料とするバイオマスコンロが使われていました。これは、インドネシアの大学教授が発明した、火力の高い代物です。
こちらはそのインドネシアの埋め立て地です。なぜ重機があるのかといえば、トラックが落とした廃棄物をならしているからです。なぜ人がいるのかといえば、ビニル袋やペットボトルなど、売れる物を探しているからです。なぜ牛がいるのかといえば、生ゴミを食べさせれば、餌代が浮くからです。
こちらは、フィリピンのエコショップ。彼女が持っているのは、旗でつくったバッグです。右上のは、新聞紙を編み込んだカバン、その下は玄関マットをほぐしてつくったポーチ、右下はココナッツでできたバッグです。この廃棄物でできた商品の売上は、いずれも製作者である貧困層に還元されます。
ここはベトナムのリサイクル御殿です。村中に段ボールがあふれかえっていて、どの家も玄関先で、あるいは工場を建てて、トイレットペーパーをつくり、町に運んで販売しています。3階建ての立派な家が建ち並んで、道にはレクサスが走っていました。リサイクルによって経済的に豊かになるというリサイクル村が、ベトナムのあちこちにできつつあります。
「ゴミ」をめぐる日本と東南アジアの関係も見てみましょう。これは、インドネシアの大学生に質問された内容です。ロボコンは、NHKでやっているロボットの競技大会ですね。この質問に、みなさんならどう答えますか?
インドネシアのスラバヤ工科大学は、ロボコンの国際大会で優勝経験がある大学です。ロボットの部品は、壊れたコピー機のベルトや、「ドロボウ市場」でかってきたジャンク品などが使われていたりもします。
さて、これは日本できのう粗大ゴミとして出されたテレビの写真です。16枚あります。なぜ16枚かといえば、このスライドが映る20秒間の間に、日本では16台のテレビが不用とされているからです。「物があふれている」。それが勝てない理由なのかもしれません。
日本の粗大ゴミの一部は、海外に輸出されて販売されています。これはフィリピンのリサイクルショップです。ちょっとガタツキがあるような引き出しでも「これくらい、直せばいいよ」と買われていきます。
タイでは婚礼ダンスなど、上質な家具が修理されて販売されていました。日本では新品で安いのが買えてしまうので、中古家具はほとんどが粗大ゴミになります。
もちろん、いまの日本がゴミを活用していないというと、そうではありません。震災によって、東京湾の埋立予定地が一杯似なるほどの莫大な廃棄物が発生しました。そのリサイクルに懸命になっています。
ここは岩手県大船渡市の遊び場です。ガレキを使って、地元の建設業者と子どもたちとが作り上げました。「自分たちで町をつくっていく。そのために、あり物を買ってくるのではなく、つかえるものをつかいたかった」そうです。
これは、ボランティアによって、被災した農家のビニルハウスが解体されているところです。このビニルハウス。もともと農家の主人の手によって自作されたものです。また土地をきれいにして、作り直す、ということでした。
これは石巻市の牧場です。流木や建材といった木質系のガレキが砕かれ、チップ化されて、ここにまかれています。コンポスト化して、肥料にするためです。これは7月の写真ですが、先週聞いたところでは、牧草が育ちはじめている、ということでした。
津波で堆積したヘドロもまた、悩ましい問題のひとつです。ですが、このヘドロに古新聞などの古紙を混ぜることで、耐久性の高い土壌となり、臭いも抑えられるそうです。この土を使って、堤防をつくる試みがすすめられています。
これは丸太のチェーンソーアートです。重くて畑にいつまでも残っていたり、窓に突き刺さったりしていた厄介者ですが、こうしてデザインを加えると、みんなが欲しがる人気者に生まれ変わります。
これは、MITのケヴィン・リンチが残した言葉です。「ゴミ」という言葉は読み替えればかんたんに「宝」になります。
自分か「いいね!」と思ったことをシェアするのはかんたんです。ですが、自分は「ううん、どうだろう……」と思うものでも、「この人だったらいいね! と思うんじゃないか」「こうすればよくなるんじゃないか」と考えて、シェアすることこそが必要なのではないでしょうか。