2011年10月27日

記憶の再生

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これは宮城県気仙沼市、南気仙沼駅周辺の模型だ。神戸大学と横浜市立大学が主催した「失われた街 ―記憶の街ワークショップ―」による作品である。復元模型をつくりながら、街の記憶、かつてどんな出来事があったかを語りあい、共有することが目的のワークショップ。白い模型をペイントし、樹を植え、車を走らせ、思い出をふせんで貼り付け、「いろづけ」をしていった。

「みいちゃんち」
「カラオケ 高校生がよく行く」
「ここの屋上に逃げて助かった」
そう、ふせんに書かれている。


2011年10月26日

「ガレキ」はなにを語るだろうか。

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このひしゃげた標識たちは、横浜トリエンナーレ・新港村の片隅に展示されていた。3月11日に何が起きたかを、ことばよりも雄弁に語るこのガレキは、"MMIX Lab"の『3.11メモリアルプロジェクト』のひとつだ。

「目の前で被害にあった方々ですから、やはり"もう見たくない"とか、"はやく片付けてくれ"という声がないわけではありません。ただ、大切なのは今の判断だけではなく、次に生まれてくる子どもたちに伝えていくこと。次の世代が通常ありえない状態のものを見て"どうしてこんなものがあるの?"と、会話が生まれます。そうして話がつながっていくことで、同じような被災を繰り返さない。語り継ぐことで命が助かるのであれば、それでプロジェクトは成功だと思っています」

津波の傷跡を、あえて残そうとしている。

一般社団法人 MMIX Lab
http://wawa.or.jp/project/000017.html


また、山形県松見町の「やまがた藝術学舎」には、2台のピアノが展示されている。泥にまみれ、脚がもげて、弦の錆びた、ピアノ。もともとは、石巻の小学校で使われていたピアノだ。アムステルダム在住の音楽家、向井山朋子による作品だ。

「うちにある口紅を持ってきて下さい。あなたの紅でこのピアノを施して下さい。死んだように静かなこのピアノがまた少しずつ花開くでしょう。失った声、なくした音のかわりに」

口紅をさしたピアノは、一音だけ鳴る。

やまがた藝術学舎 展示「夜想曲/Nocturne」
http://gs.tuad.ac.jp/mukaiyama/


2011年10月25日

「災害廃棄物」からなにができる?――リメイクまとめ。

昨日に引き続き、「災害廃棄物」のリメイクをまとめてみた。


大野木工生産グループは、岩手県野田村で流されたアカマツを使い、給食器をつくっている。おわん2個と小皿・大皿の4点セットを100人分だ。

大野木工は、岩手県大野村にある組織。かつて、男たちの大半が一年中出稼ぎをして生計をたてるような暮らしをしていた村だったが、地域の資源(人・技・もの・自然・風土等)を生かしたモノづくり「一人一芸の村づくり」が提唱され、1980年から木工技術の振興がはかられた。「地域の素材を生かし、地域の人が作ったものを、地域の暮らしに生かす」理念のもと、学校給食の食器を作り続けてきた。

今回、材料となるアカマツからは、放射能は検出されていない。

大野木工生産グループ
http://www.sukaheru.net/~minori/index.html


茨城県の下妻市では、被災した屋根瓦を砕いて「瓦チップ」を作成した。10月20日から市民に無料配布されている。水の浸透性に優れるため、花壇に敷き詰めるなど、ガーデニングの利用に適しているそうだ。

震災の影響で崩れた瓦は2700軒分、合計1300トンにのぼる。すべてが配布できれば、埋立処理の経費が浮くため、1,500万円の費用削減になる。

下妻市公式webサイト
http://www.city.shimotsuma.lg.jp/cgi-bin/kanrisystem/newsview.cgi?no=2402


「災害廃棄物」からフクロウやクマ、クワガタ、タカもつくられている。流木を素材にしたチェーンソーアートだ。

カナダでのチェンソーアート競技大会で三連覇を成し遂げた千葉県在住の栗田宏武らによる復興イベントのなかで制作された。子どもたちの目の前で、家に突き刺さっていたイヤな流木が、見る見る姿を変え、本物の動物そっくりになっていった。

香亜奈工房
http://www.kaana.jp/welcome/framepage1.htm





2011年10月24日

被災した松たち

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東北の沿岸部には、津波や潮風を防ぐための防潮林がありました。とくに岩手県陸前高田市の高田松原には7万本もの松があり、景勝地として有名でしたが、今回の津波でほぼすべての松が流されてしまいました。復興のため、流木は薪として販売されましたが、表皮より放射性セシウムが検出されたため中止に。検出されたのは、セシウム134が542、セシウム137が588ベクレルです。ちなみに焼却処理が可能とされる国の暫定規制値は1キログラム当たり8,000ベクレルです。

現在は表皮の部分でなく、乾燥させた内部を「復興支援数珠」として制作・販売しています。

復興の薪+αプロジェクト
http://www.fukkou.org/contact-us/tyumon


また、宮城県石巻市の関脇小学校近くで焼け残ったアカマツは、ハンガリー発祥の木製笛「コカリナ」となりました。震災による火災で小学校は全焼。現地を訪れたコカリナ奏者の黒坂黒太郎さんがチャリティコンサートで資金を集め、コカリナを作成し、生徒にプレゼントされました。今年中に在校生約200人に贈られる予定だそうです。

復活の笛「コカリナ」東北支援ブログ
http://pub.ne.jp/kocarina96/?entry_id=3926108




△ちなみにコカリナはこんな音色です。



2011年10月23日

花の捨てかた

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国連大学前で行われたイベント、「青山コモンズ」をのぞいてみた。青山学院大学の学生が中心となって、青山の街の在り方を考えるのがテーマらしい。リースをつくり、東北へと贈る「花綵(はなづな)列島」のワークショップなどが行われた


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トークショーでとくに興味深かったのは「花の捨てかた」の話題が出たこと。花は必ずしおれて、枯れる。せっかく生活を彩ってくれたのに、ただポイとゴミ箱に放り込むのは忍びない。なにか方法はないものか。

「公園に行って捨てている」「ていねいに包装して捨てている」といった意見が出た。

なるほど。古くなったぬいぐるみやオモチャを、ただ捨てるのではなく「供養」を受け付けていることを思いだした。(人形供養ドットコム)


「長い旅路の最後に、腰をおろして、一言も喋らず、何が心の中に残されてゆくのかを、ともに考えるのは、アイルランド人の習慣であった。別離の瞬間は、意味深長で記憶に刻みこまれる、儀式のときである。通り過ぎた場所や廃棄されたモノに「さようなら」を言うためにも、心に残るモノとの別離を受け入れるこうした儀式が、私たちには必要である。(ケヴィン・リンチ)」