タイでは寄付が盛んに行われています。これは、徳を積む、という考えに基づくものです。その証拠に、不用になった衣服等を入れる箱が、駅の中、お店の前、大学の中などあちこちにあります。
そして、服だけでなく、さまざまな不用品を引き取り、慈善事業に活用しているのが、
SuanKaew財団です。この財団は、Phra Payom Kallayanoという、タイで最も高名な僧侶が立ち上げたもので、webサイトによると、18の社会事業を行っています。
社会事業のうち、寄付した品物を、貧しい人々に分け与えるのが "
Good Will project"、その品物を販売して、事業資金に充てるのが "
Poor People's Supermarket project" です。
家庭の不用品に限らず、オフィスのイスや机・棚・パソコンなども回収してくれるそうです。タイのIT企業で働く方がそう教えてくれました。(「予約した日に取りに来てくれなかった、しかも2回。」だそうですが……)
ネットで調べてみると、寄付したことをPRしている会社もありました。
・
TT NETWORK INTERGRATION THAILAND・
ADVANTESTさらに、事業の詳細について、タイの友人に頼んで、インタビューしてもらいました。
――何を寄付できるのですか? 家電や家具など、どんなものでも良いのでしょうか。また、壊れていても大丈夫ですか?
「寄付品は何でもOKです。不用なもの、家具も電気製品も、壊れたものでも大丈夫です。トラックで取りに行き、こちらで分別します。まだ使えるものは必要そうな人にあげます。そのまま使えないならリサイクルします。」
――活動範囲はどれくらいなのでしょうか?
「バンコクおよび首都圏が中心です。ただし、トラック半分以上に量があれば、場所によっては取りに行きます。」
――だれに寄付しているのですか? また、今までにどれくらいの人々を支援してきたのですか?
「物によって違います。、必要としている人に渡します。我々は1993年から、大規模にこのprojecctをしています。」
最後に、
一橋大学の修士論文の中に、この財団の活動に触れている箇所があったので、抜粋してご紹介します。
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<ワット・スアンゲーオ>
ワット・スアンゲーオはバンコクの北、ノンタブリー県にある大きな寺である。バンコクの中心部から車で40分ほどで、水田が広がるのどかな風景に囲まれた寺に着く。境内には、様々な慈善活動のためのセンターが建っている。この寺が慈善活動を始めたのは1986年、住職のプラ・パヨムの意志によってスアンゲーオ財団が設立されて以来である。住職はユニークな説法と積極的な社会活動により徐々に高名になり、今では、プラ・パヨムの説法を聞くために遠方から車でタンブンにやって来る信者が大勢いる。土日には、寺の敷地内一杯に車が止められ、まるで何かのテーマパークのようである。
財団によると、現在行っている活動は14種類あるが、目的は主に青少年の健全な育成と貧者救済の二つに分かれる。学校の夏休みを利用して、少年達を寺に集め、仮の僧侶として模擬出家させることで、心身の健全な育成をはかり、仏教の基本的な思想を教える活動が毎年行われている。また、失業したり、火事で焼け出されたり、行き場のなくなった人々を受け入れるシェルターもある。ここでは、食事と住居が無料で提供される。希望するものには、家電製品や家具などを修理する職業訓練を行っている。障害者や、捨てられた老人も受け入れており、一生、寺で面倒を見ると約束している。
寺を訪れる信者は金品の寄付の他に、壊れたり、不要になった家具や電気製品を持ち込み、寄付としておいていく。寺の敷地内には、古い家具や冷蔵庫、エアコンなどがうず高く積まれた場所があり、一見粗大ゴミ捨て場のようである。これらを修理をして、新たに販売するのが寺に住む貧しい人々である。彼らは、修理や販売による収入はもらえないが、食事と寝場所は寺によって保証されている。修理の仕事を覚えたら、寺を出て、自立して修理工になるように、というのが寺の計画だ。現在、寺で生活する人々は500〜600人いる。
このシェルターは、バンコクに5カ所ある労働社会福祉省公共福祉局が管轄するシェルターの一つに指定されている。しかし、寺によると、政府からの支援は特にない。
この寺では障害者を対象に特別な活動を行っているわけではないが、シェルターで暮らす人々のなかには障害をもった人が多く、財団の運営をするスタッフの一人も障害者である。健常者に比べて、仕事を見つけることの難しい障害者が、貧困状態にあった場合、物乞い以外の道で暮らして行くには、このような寺の存在が必要になるだろう。タイでは、寺に行けば食事と寝る場所は提供されると言われているが、多くの寺は社会活動に関心を持っていないため、ワット・スアンゲーオのように、寝食の提供に加えて、その先の自立のための方法までもは示してくれない。しかし、この寺でこのような活動が可能となるのは、人気がある寺で、寄付が沢山集まるからであって、そうではない一般の寺に、社会活動を始めるような資金はなかなか出せないだろう。また、住職の人徳や思想が、寺のあり方を大きく左右するため、社会活動を行う際には、僧侶個人の力量も大きく問われる。
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posted by 瀬戸義章 at 21:08
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2カ国目「タイ」
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