インドネシアには、大がかりな補修によって甦った、1000年前の遺跡があります。「ボロブドゥール」。ジョグジャカルタ市から北西約42キロにあるこの仏教遺跡は、世界遺産に登録されています。
西暦780年から833年にかけて、当時ジャワ島を治めていたシャイレーンドラ朝によってボロブドゥールは建造されました。しかし、この王朝の崩壊後、遺跡は歴史から忘れ去られてしまいます。イギリスのジャワ総督ラッフルズによって、密林の土中から再発見されたのは、1814年のことでした。
1973年、ユネスコによる大規模な補修がはじまります。まず、遺跡はすべて解体されました。そして、5万5千個の安山岩は、一つ一つ番号が付けられ、コンピュータで管理されながら、ふたたび組み立てられていきます。
幅123メートル。高さ31.5メートル。世界最大の大乗仏教遺跡は、10年の補修を経て、ふたたび甦りました。1984年2月22日に、スハルト大統領が、ボロブドゥールの修復完成記念式典を盛大に行っています。これは、その記念碑。
しかし、いまなお遺跡の補修は行われています。接着剤の類いはいっさい使われず、石が積み木のようにバランスよく配置されたこの遺跡は、赤道直下の日差しとスコール、そして年間100万人の重みによって、常にひずみ、ガタツキが生まれています。
そこで職人が、日々、石を外してはまた組み直し、隙間を詰め、ずれを直してるわけです。
タイを始めとする仏教国から、多数の信徒が訪れるこの遺跡は、そうやって守られ続けています。