「Qドラム」。これがあれば、一度に50リットルもの水を、簡単に運ぶことができます。ご覧の通り、とても単純な仕組みですが、考えつかなかったドーナツ形。複雑な機構でないため、ロープを結べば、だれでもすぐ使えます。
生活に欠かせない、水。運ぶのは、主に女性や子どもの仕事です。水場は村ごと・地域ごとに決まっています。歩いて5分のところにあるかと思えば、往復に2時間、川まで険しい山道を登り降りしなければならない村もあります。
それまでは、5リットルのポリタンクを、抱えて歩いていました。
いまでは、一度運ぶだけですみます。
実際に運んでみました。思ったよりも楽に転がせます。坂道では転がってしまわぬよう、慎重さが必要ですが、それでもポリタンクを抱えるよりはずっとお手軽。ただし、急勾配で手を離してしまうと危険なので、小さな子ではなく、16歳くらいから、これで運ぶようにしているとか。
このQドラムが使われているのは、東ティモール、オエクシ県。現地のNGOセントロ・フェトが、一つ10ドル(5ドルの二回払い)で販売しています。初回販売では、17個売れたそうです。
Qドラムのもともとの値段は、65ドル。さらに輸送費や関税などがかかります。それをなぜ10ドルで販売できるのかと言えば、米国NPOコペルニクが寄付を集め、現地のNGOに提供しているからです。有料で販売している理由は二つ。一つは、きちんと使ってもらうため。もう一つは、現地のNGOの活動資金とするためです。ただ物品を提供するのでなく、活動が持続できるように、波及効果がある仕組みとなっています。
オエクシの中心部から、提供先のオエノアまでは、山道を車で行くこと1時間以上。燃料代だって馬鹿になりません。
販売時には、「収入はいくらか」「水を運搬するのにどれだけの時間をかけているか」など、生活状況についての細かいヒアリングを、購入者一人一人に対し、行っています。50リットル水を運べば2,3日持ちますし、浮いた時間は、勉強をしたり、薪を集めたり、別のことに使えます。そういった効果を、期間をおいてまた質問をすることにより、具体的に知ることができます。
コペルニクの共同代表である中村さんは語ります。
「テクノロジーをただ届けるのではなくて、アセスメントをしていきます。便利なのか不便なのか、どれだけ生活が向上するのか。そういった情報を、Amazonのレビューのように掲載できれば、ユーザーはどの製品を選べばいいのか、判断することができます。また、ファウンダーには、価値ある市場が潜んでいることを伝えられます。製品をより良くするためのフィードバックにもなります。ソーシャルな市場を見える化し、活性化することが狙いです。」
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