明るい笑顔とともに働く女性たち。みんな、NPO法人「かものはしプロジェクト」のコミュニティファクトリーに勤めています。訪れたとき、全員が立ち上がって、合掌して、「チュムリアップ スオ!」と挨拶してくれました。凄い。
カンボジアの首都プノンペンから、長距離バスで約6時間。世界遺産アンコールワットがある街、シェムリアップ近郊の農村に、このファクトリーはあります。共同代表のひとり、青木さんに案内していただきました。
ここで働く女性たちは、そのほとんどが「最貧困層」に属します。彼女たちへの給金は、1日1.25$〜1.75$。これで世帯収入の約6割を占めます。「もっとあげたいんですけどね……」と青木さん。まずは、売上を2012年までに1,200万円にし、ファクトリーを黒字化することが目標だそうです。
現在、70人強の女性たちが、周囲5km、一番遠くて20kmから働きに来ています。作っているのは、主にイグサを使ったバッグや雑貨。年間約8tのイグサを仕入れ、製品を作っています。
まずは染料を調合して、
イグサをカラフルに染め上げます。
次に、色のバランスに気を配りながら、1本1本織り込んでいきます
そして、大きさを整えて、
裁縫していきます。
何個作らねばいけないのか、ホワイトボードで生産管理もしています
デザイナーからの色指示が、うまく伝わらなかったようで、再確認。基本的なことにも、時間をかけて、根気よく。
そうしてできた、色とりどりの商品たち。基本的には、カンボジアのお土産店に並びますが、日本やアメリカから依頼が来ることもあります。
日本の皆様だけに、新製品のリサイクル素材+いぐさを使ったバッグをご紹介。どうかカンボジアには秘密にしてくださいね。
――各国のNGOが、カンボジアの貧困層支援のために、廃材からリメイクした商品を製作し、販売していますが、競争過多になりませんか?
「確かに、潰しあっては意味がありませんね。でも、カンボジアは、ここ10年間で平均8%の成長を続けています。そんな市場では、より良い商品を作ろうと競合することは、切磋琢磨になると思いますよ」
ところで、かものはしプロジェクトは、2002年に児童買春の解決を目的としてスタートしたNPOです。
――それがなぜ、いぐさ製品を作っているのでしょうか?
「児童買春の根源は『貧困』にある、と考えているからです。カンボジアは農業国ですが、土地を持たず、わずかな収入しかない人々が5%いると言われています。例えば、病気をして、薬が必要になった。それを買うために、だまされて、子どもをわずかばかりの現金とともに『出稼ぎ』に出してしまう。その子どもたちは、買春を強要される。そんな現実があります。もしその世帯に、しっかりした収入があれば、子どもが売られることを防げます。ですから、このコミュニティファクトリーでは、最貧困層の女性しか雇わないように、こだわっています。」
――なぜ女性なのですか?
「統計的に、男性よりも女性が収入を得たほうが、家族にいきわたりやすいんです。」
――なるほど、お酒やギャンブルに消える心配が少ない、というわけですね。活動の成果はいかがでしょうか。
「もともとは、IT事業部の代表として日本にいました。新たなチャレンジをもとめて、カンボジアに長期滞在するようになったのは、2008年からです。」
「活動をはじめた2002年当初に比べると、明らかに、児童買春は減ってきています。調査のために売春宿に行っても『ポリス、ポリス』と断られますから。それは、政府が摘発に力を入れているからです。」
「アメリカの圧力もあるでしょうし、戦後の世代が、自分たちの国をよくしようと懸命に活躍している結果だと思います。かものはしプロジェクトも、警察に対して売春宿の摘発研修支援を行いました。ですから、かものはしとしては、まだ児童買春がの被害が多い、他の国への進出を視野に入れています」
「個人的には、ここに来て、自分のやりたいことが見つかったのが大きいですね。最貧困層の女性は、自分に自信が無いことが多いです。ここで働きはじめても、『不登校』になることが、しばしばあります。そういったときには『家庭訪問』をして、話し合いをしています。正直、それは手間がかかりますし、コストです。でも、働き続けて、お給料をもらって、技術を身に着けた彼女たちは、徐々に明るくなってきます。顔つきが変わっていきます。そういったエンパワーメントをすることが、自分のやりたいことだと感じました」
青木さん、ありがとうございました!
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