ここは、フエ市の町外れにある、昔ながらの市場です。(訪れたのが夕方だったので、残念ながら誰もいませんが。)この場所の環境改善・衛生改善が、いま、子どもたちの手によって行われています。
例えば、雨が降ると、泥だらけになっていた道に、砂利を敷き詰めました。
魚売り場には、排水溝と簡易浄化槽を設置しました。それまでは、うろこや内臓の混じった排水が、川へ流れ込んでいたからです。
ビニル袋は、他のゴミと混ざらないように集めています。
また、果物の皮や野菜くず、動物の骨、魚のはらわたなど、ここで排出される生ゴミも、子どもたちが自ら回収しているそうです(上の写真はその説明資料です)。集めた生ゴミはコンポスト化して、近隣の農家で有機農法に使われています。
いずれもこの地域に住む子どもたちによって、主体的に行われています。彼らの手助けをしているのが、NPO法人 ブリッジ エーシア ジャパン(BAJ)です。ホーチミン市のスタッフである、片山恵美子さんにお話を伺いました。
――BAJの活動について教えてください。
「ベトナムでは、2002年に実施した、『ベトナムの都市ゴミリサイクル調査』をきっかけとして、貧困層への支援をしています。」
「捨てられるゴミも、きちんと分別収集すればお金になります。ビニル袋が1,2数あっても、誰も引き取ってくれません。しかし、大量に揃えていれば、有価物としてお金になるのです。」
「そこで、きちんと集めるために、最初は母親たち、ついで子どもたちによる戸別回収を行うようにしました。毎週火曜日と金曜日に、ビニル袋を集めてまわるのです。そうして数をそろえれば、業者が買い取りに来てくれます。たまったお金は、街灯を設置するなど、地域の環境改善に使っています。」
――ポイントはどこですか?
「子どもたちと、関係を築くことが重要です。」
「たとえば、学費を渡して、はい、終わり。では、上手くいきません。彼らは幼いころから、靴磨きや物売りなどをしています。自分の考えで動くことに慣れているので、学校生活が窮屈に思えるのです。親も、学校教育を受けさせなきゃ、とは考えていないので、学校を辞めてしまうケースがあるからです。」
「そんな子たちをフォローする補習も、どこかの施設を使うのではなく、家の一部を間借りして行います。子どもたちが勉強しているさまを、親に見せることで、理解してもらうことが狙いです。」
「また、彼らのペースに合わせる事も必要です。」
「例えば、浄化槽の設置も、勝手に工事を進めません。子どもたちが、地域の人々に説明をして、理解をしてもらって、日時の調整をして、それから始めて着工するのです。」
――随所に工夫を感じます。
「ずっと試行錯誤を続けているからです。」
「『マイクロクレジット』といって、学費や、新しい商売を始めるための資金(3,000円〜1万円)を貸し出していますが、貧困層の人々は貯蓄に慣れていません。月単位で返済を求めても、上手くいかないのです。そこで、毎日、スタッフが20円ずつ回収するなど、集金も一手間かけています。」
「また、『エコクッキング大会』というイベントも行っています。これは、料理をするときに、どれほどのゴミが出るか、実感してもらうためのイベントです。グループごとに分かれて、買い物をするところから始め、最後にいったい何枚のビニル袋を使ったのか、カウントをします。多いグループで15枚使ったところもありました。3食で45枚。100世帯なら4,500枚。といった数字をイメージしてもらうことで、ビニル袋収集の意義も、また理解してもらえるようになります。」
「子どもたちは、実践を伴っているからか、高い環境意識を持っています。『休日に洗濯のアルバイトをしているが、その排水で川を汚してしまうことが心苦しい』といった事を訴える女の子もいます。実際に、水質調査から、排水地図の作成、浄化槽の設置提案、実施まで行ったこともあります。」
――それは、まるで環境コンサルタントですね。いまの活動規模を教えていただけますか?
「当初はホーチミン市のアンカイ地区(約250世帯)で活動をしていました。やがて、他の都市の行政官から依頼が来るようになり、今では、ホーチミン市・フエ市・クイニョン市で、計1,100世帯ほどを対象に、支援を行っています。」
――今後の課題はなんでしょうか?
「地域の伝統的な農作物・料理を守ることです。冒頭の市場に並ぶ作物も、近くの農村で採れたものでなく、卸問屋から買ったものが並ぶようになってしまいます。そうではなく、地産地消することで、文化を守っていきたいと考えています」
BAJの皆様&子どもたち ありがとうございました!
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