このランチョンマットは、バナナからできています。残念ながら、食べることはできません。ラオスのサラワン県ラオガム郡ホアイフンタイ村で作られているこの製品。現地の生産者と、JICAから委託をうけたIC NET社と多摩美術大学の「バナナ・テキスタイル・プロジェクト」の協力により作り上げました。
『THAI KEIZAI』の記事でこの取り組みを知り、IC NET ASIA社のオフィスにお邪魔して、岩城さんにお話を伺いました。(ちなみにバンコクでは、10誌を超える、日本人向けの新聞やフリーペーパーが発刊されています。この新聞は、伊勢丹の中にある紀伊国屋書店で買いました。)
このマットは、バナナの茎の部分をすき、その繊維を結び合わせて糸状にしたものを、織って作るそうです。強度を保つ関係上、綿もあわせて使っています。
製造には、現地の伝統的な織機を使います。腰に固定して座って使う、伝統的なこの織機は、農作業の合間にもできるように、持ち運び可能な形になっています。茎をすく工程からはじめて、一つの製品ができるまでには約1週間かかるとか。
販売価格は約100〜700バーツ(約300〜2,000円)。ラオスにはこの価格帯で買える層が少ないため、主に観光客が買っていきます。それまで、ほぼ自給自足で暮らしていた村民の、貴重な現金収入となっているそうです。
もともとこの村では、ビーズを織り込んだ珍しい織物を織っていました。そこに更に付加価値をつけた新しい製品を一村一品産品として作るため、村で多く植えられているバナナの茎を織物に使うことを考えました。そこで、多摩美術大学に協力を依頼して製品化されたそうです。
ラオスの一村一品運動では、バナナ繊維の製品化にとどまらず、バナナ焼酎、蜜蝋や黒米、線香に陶器など、数多くの産品開発を行っています。
もともと、一村一品運動は、1980年に大分県ではじまった運動です。今では、日本だけでなく、東南アジアにも広がり、タイではタクシン前首相が、政策として推し進めたそうです。
国を挙げての取り組みにより、特産品の市場は、2001年には、年間2億4,500万バーツ(約7億3,500万)だったのが、2008年には777億バーツ(約2,331億円)へと急成長しました。このうち、86%が国内での売り上げだそうです。
アイ・シー・ネット社は、さいたま市に本社があるコンサルティング会社。JICAなどから委託を受け、全世界の開発分野を手がけています。このタイでの成功事例をもとに、現在、お隣の国ラオスで、開発援助を行っているわけです。
こちらは、一村一品運動で生まれた製品を販売するお店「HUK E-san Shop」のようす。BTSのAri駅から徒歩5分の場所にあります。"民族工芸"のイメージを、ある意味払拭するような、カラフルな品物が並びます。
籐製品をつくるときに廃棄していた、ラタンのトゲをつかった爪楊枝。25バーツ(約75円)。エスニック料理店などにおいてあると、雰囲気が出そうですね。
「ラオスにおけるJICAの一村一品プロジェクトは、あと1年が期限となっています。それまでに販路を拡大して、彼らが自立できるように頑張ります」。
岩城さん、ありがとうございました!