8月4日に、宮城県のwebサイトに掲載された『
宮城県災害廃棄物処理実行計画』を簡単にまとめてみます。
そもそも、東日本大震災によって膨大な災害廃棄物が発生した主な原因は、津波でした。宮城県だけで、津波被害を受けた海岸線の長さは約828km、浸水面積は327平方キロメートルにおよびます。ちなみに、これはパリの面積の3倍以上です。
津波によって生じた災害廃棄物には様々な種類があります。木くずにコンクリート、アスファルトくず、鉄くずに廃プラスチック、廃家電に粗大ゴミ、ガラスや陶器、瓦、ヘドロ、そして車両や船舶、廃タイヤ。また、薬品、ガスボンベ、消化器といった危険物や、PCBをふくんだトランス、アスベストを含んだ石膏ボードといった発がん性物質まで流されて堆積しており、すばやく安全に処理しなければなりません。
こうした災害廃棄物は「一般廃棄物」として扱われます。おもに家庭ゴミとしての扱いで、市町村単位で処理しなければなりません。しかし、宮城県で発生した災害廃棄物の総量は1,820万トン(可燃物450万トン、不燃物1,370万トン)。年間の一般廃棄物処理量は80万トンでしたから、およそ23年分です。処理しきれない分は、宮城県が代わりに業務を請け負います。
宮城県は4つのブロックに分けて処理を行います。北から気仙沼ブロック(気仙沼市、南三陸町)、石巻ブロック(石巻市、東松島市、女川町)、宮城東部ブロック(塩竃市、多賀城市、七ヶ浜町、松島町)、亘理・名取ブロック(名取市、岩沼市、亘理町、山元町)となります。仙台市や利府町は県に委託せず、自分たちで処理を行います。
各ブロックの概要はこのようになります。
●気仙沼ブロック
・災害廃棄物:298万トン
・津波堆積物(ヘドロ):110万立方メートル
・ほか地域に比べ、被災した船舶の数が多い。
●石巻ブロック
・災害廃棄物:746万トン
・津波堆積物(ヘドロ):380万立方メートル
・もっとも被害が大きく、災害廃棄物の量が多い。
・港湾の工場地帯が被災したため、事業所からの発生が多い。
●宮城東部ブロック
・災害廃棄物:170万トン
・津波堆積物(ヘドロ):170万立方メートル
・市街化が進んだエリアのため、住居からの発生が多い。
●亘理・名取ブロック
・災害廃棄物:300万トン
・津波堆積物(ヘドロ)575万立方メートル
・広大な農地が被害を受けたため、ヘドロの堆積が多い。
災害廃棄物はいま、各市町内数ヶ所につくられた「一次仮置き場」に集められています。ここで、粗く分別をして、リサイクルできるものは回収し、残りはさらに大きな「二次仮置き場」へ運んでリサイクル・焼却・埋立が行われます。一次仮置き場での処理は各自治体が、二次仮置き場の処理は宮城県が行います。
宮城県は、この四つのブロックごとに、民間企業から処理方法の企画提案を受け付ける「プロポーザル方式」をとりました。まず決まったのは石巻ブロック。9月16日に、大手ゼネコンの鹿島建設を中心とした共同企業体(複数の企業が協力して工事をするための組織)が受注しました。この費用は1923億円です。
ちなみに、地元企業を優先すべきだ、談合だと言われていますが、近くに住む人にとっては「いいから早く片づけてくれ」というのが本音でしょう。廃棄物撤去が遅れた理由としては、大手ゼネコンでなく地元企業を優先しすぎた、事業費の負担を県や国が明確にしなかった、といった点が指摘されています。個人的には、多額の費用で処理を行う以上、世界にプレゼンできるような結果を期待しています。
全体の流れは、ガレキの撤去 → 一次仮置き場での分別 → 二次仮置き場での分別 → リサイクル・焼却・埋立となります。これを3年で完了させることが目標です。宮城県のガレキ撤去率は、9月15日時点で51%です。
リサイクルについては、こんな用途が検討されています。
・ガレキやヘドロ:公共工事の埋め戻し材、盛り土
・木くず:燃料、堆肥、敷き藁、製紙原料、パーティクルボード原料
・廃タイヤ:セメント原燃料
・金属くず:金属製品原料
・廃プラスチック:プラスチック原料、RPF原料
焼却に関しては、二次仮置き場に仮設焼却炉が建造される予定です。県内の施設だけでは処理能力を超えているからです。各ブロックの焼却施設を365日フル稼働したとしても、余剰処理能力は1年間に50万トンにしかなりません。可燃廃棄物450万トンをすべて焼却するとしたら、9年かかってしまいます。上の写真は、仙台市若林区蒲生に建設中の仮設焼却炉です。
埋立もまた、県内では処理しきれず、他県に応援を求めています。しかし、放射性物質への懸念から、受入を表明しているのが山形県のみで、現在も交渉中とのことです。
ちなみに山形県は、震災当初の医療廃棄物や、石巻・気仙沼の水産廃棄物の受入など、今回の災害廃棄物処理においては、積極的に協力しています。
計画の一次案では、放射性物質のモニタリングは、「仮置き場撤去後に、土壌を対象とした調査を行う」ようですが、放射性物質への注目度を考えると、見直しが迫られそうな項目ですね。
posted by 瀬戸義章 at 16:42
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東日本大震災「復興支援と災害廃棄物」
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