「靴をはいちゃダメだ。絶対ダメだ。」
そう何度も注意されました。なぜか。河底には泥が堆積している場所があり、そこに靴のまま踏み込むと、足をとられ、引きずり込まれるからです。そう言われて、履いていたサンダルを両方とも、腰に挟み込みました。

時刻は夕方の6時から7時にかけて。日はまさに暮れようとしています。もうすぐ真っ暗になることでしょう。これから、この河を、歩いて渡ります。
NGOおよびTV取材班の方々と一緒に、東ティモール、オエクシ県のスネ・ウフェ村を訪問した帰りのことでした。行きはほとんど干上がっていた河が、夕立により、あっという間に増水。そしてここには、車で行き来できるような橋がありません。
こうやって渡るのみです。
簡単そうに渡っているこの地元の人々に、相談しました。あわせて約15名のスタッフに対して、一人ないし二人が脇につき、流されないように、そして迷わないように助けてもらいます。撮影機材なども、代わりに運んでもらいます。……弥次さん喜多さんが安倍川を渡ったときのように、おんぶしてもらえるわけではなさそうです。
あくまでも、自分の足で進まなければなりません。パートナーが、河に入る前に、ぐっと右手首を握りなおしてくれます。あとは、慎重に力強く進むだけです。
力強く進むだけなのですが、川底には尖った石、あるいは木の枝が山積しており、ふだん裸足で歩くことの無い皮膚を傷つけます。かといって、踏ん張らなければ、腰の辺りまで沈む急流に飲み込まれてしまいます。そこで、すこし流されつつ、(引き止めてもらいつつ)斜めに渡っていきました。
しかし、渡りきった! と思っても、また目の前に河が現れます。
すっかり日は落ち、あたりは真っ暗。明かりは数人が持つLEDライトのみ。両岸から照らしてくれていたはずの、車のヘッドライトも届かなくなりました。水面の様子もはっきりしません。いきなり深くなり、誰にも気づかれないまま流される可能性だってあります。
進むためには、一歩、一歩に集中。集中。ひとつの河を渡り終えたら、振り返って皆を待ちます。
「がんばれ! あと少し!」声をかけながら。
こうしてなんとか渡った河は、合計で6つ。あとで計算してみたところ、全て渡り切るのに1時間かかっていました。

無事に渡りきったときの全員の喜びようといったら。ホントに助けになりました。ありがとう!
後で聞いた話ですが、2004年に韓国軍の兵士4名が、この河で溺れたそうです。知っていたら、渡るという判断は下さなかったでしょうね。
前回記事で触れた、インフラの未整備による影響は、こうして、身をもって体験することができました。
posted by 瀬戸義章 at 01:28
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6カ国目「東ティモール」
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